【内容】
2012年以来,自由集会「小さな自然再生が中小河川を救う!」のタイトル名により4回の集会を積み重ねてきた.一昨年度に事例集の作成と発刊を契機として,全国各地に様々な取り組みが行われるようになり,多様な主体による参画が推進されている.技術面においても,魚道や河道変化に限らず,様々な工夫が取り入れられるほか,普及に伴って安全面への配慮についても考え方が整理されつつある.今回の集会では,これまで紹介されてこなかった方法(シードバンク)や行政による参画の方法(市,県や国),そして安全管理についての話題を取り上げ,より実務的に展開し,より多くのセクターからの参加を促すための方策について議論したいと思います.
【プログラム】
■司会:三橋弘宗・林博徳
■話題提供:各15分程度×5件(計75分程度)
@これまでの経緯と開催の趣旨説明 (三橋)
A事例紹介
・「池を掘ってシードバンクをリフレッシュ」 西廣淳(東邦大学)
・「行政発信の小さな自然再生 豊田市岩本川モデルの挑戦」
伊藤匠・田中五月(一般社団法人ClearWaterProject)
・「河川整備で活かす小さな自然再生の取り組み紹介」 竹内えり子(建設技術研究所)
・「小さな自然再生のための水理検討 入門編」 原田守啓(岐阜大学)
B小さな自然再生研究会の発足と実務講習会の案内(JRRN)
会場からのコメントと議論
【内容】
ダム下流は,ダムによる流況,流砂,水温・水質,粒状有機物などの変化を要因として,河川の生物群集が変化する.このことについては,応用生態工学会の前身の同研究会設立時以来,広く興味を持たれ,会誌『応用生態工学』においても特集がされている(1999年).それ以降も,各研究者により研究が続けられているが,いったい何がどこまでわかったのだろう?
ダム直下がどのような生物群集になるのか,ダムの規模や運用方法などによってどのように反応が異なるのか,どのような要因が主に効いているのか,いままでの研究を総括するとともに,これからのダム管理にも貢献する研究について議論したい.
【プログラム】
●一次生産者「ダムによって注目される一次生産の脇役たち:矢作川の事例から」
内田朝子(矢作川研究所)
・コメント:森 照貴(東京大学)
●底生動物「底生動物群集はダム下流でどう変化しどう緩和されるか?」
片野 泉(奈良女子大学)・土居秀幸(兵庫県立大)・三橋弘宗(兵庫県立人と自然の博物館)
・水守裕一・松岡真里奈・角絢香(兵庫県立大)
・コメント:一柳英隆(水源地環境センター)
●魚類「ダム上下流の魚類群集比較の解析事例」小野田幸生(共生センター)
加藤康充(建設環境)・森 照貴(東京大学)・末吉正尚(共生センター)
・コメント:田代喬(名古屋大学)
★コメント(議論の導入として):竹門康弘(京都大学防災研究所)
議論:谷田一三(大阪市立自然史博物館)コーディネーター
総括:辻本哲郎(名古屋大学名誉教授)
【内容】
人の生活にとって役立つ生態系機能について,概念は知っていても,具体的にわかって操れる人は少ないのが現状です.メカニズムを科学的に理解すれば,生態系の再生や資源利用に対して,今よりもっと積極的になれるはずです.
水質浄化を主題としつつ,快適な環境とヒトの生活を目標として,生きものによる浄化対策の実例,自浄作用の実測に関する情報,意見を交流します.
これまで当学会で扱われることが少なかった分野での意見交換です.今後実装例を増やすためにも,経験,興味のある方のご意見,ご批判を求めます.気軽にご参加ください.
【プログラム】
趣旨説明(計5min.)
・中野和典(日本大学) 自然の力を活かした浄化施設
・渡辺敏(ウエスコ) 浄化機能の高い自然をつくる
話題提供(各12min. +質疑 3min.)
・尾花まき子(名古屋大):洪水後の砂州の窒素減少
・松下太郎(ウエスコ):生きもので水族園の水を浄化する
・大附遼太郎(日大大学院工学研究科・学生):花壇を活用した排水処理システム の開発
・中野和典(日大工学部・教員):電気と水道が不要で排水が出ないトイレシステムの開発
・横田岳史(株式会社リードネット):花壇を活用したトイレ排水処理 カンボジアでの取り組み
総合討論 意見交換(20min.)
【内容】
UAV(ドローンとも呼ばれる)の機体性能の向上,SfM(Structure from Motion)技術の発展によって,自律飛行やオルソ画像の作成,地形測量が簡便に実施できるようになり,貨物運送や農業,災害分野など様々な分野での利活用が進んでいる.応用生態工学会でも環境や生物相調査での事例発表が増えつつあり,今後の益々の発展・普及が期待されるところである.この自由集会では,UAV調査やSfM技術の基礎,UAVに関する最近のトレンド,UAVを用いた様々な対象のモニタリング事例, 微地形測量,ヒヤリハット事例や苦労話などについて話題提供いただき,各種調査に最適なUAVやソフトウェア,今後の展望,安全な運用方法などについて意見交換を行いたい.
【プログラム】
趣旨説明:山田浩之(北海道大学)
話題提供:
1.UAVでわかること,わからないこと:動植物や景観調査の事例から:上野裕介(東邦大学)
2.UAV-SfMによる干潟モニタリングとハビタット評価:伊豫岡宏樹(福岡大学)
3.大地をスキャンする! 河川,湿地,森林の調査事例:丹羽英之(京都学園大学)
4.UAVを使ったちょっと変わった調査法:山田浩之(北海道大学)
総合討論:
コメンテーター 鎌田磨人(徳島大学)
【意見交換会メンバー】
国土技術政策総合研究所:松尾和己 水環境研究官,福島雅紀 主任研究官
土木研究所:萱場祐一上席研究員
土木学会環境水理部会:芝浦工科大学 宮本仁志 教授,鳥取大学 矢島啓 准教授,
山口大学 赤松良久 准教授,玉野総合コンサルタント(株) 大橋伸之
応用生態工学会:徳島大学 河口洋一 准教授,名古屋大学 田代喬 准教授,
東邦大学 西廣淳 准教授,国際航業(株) 中村敏一
【日時・場所】 9月2日(金) 14:30〜16:30 弥生講堂会議室
【趣旨】
国土交通省においては,平成24年6月に河川砂防技術基準(調査編)(以下,河砂基準)が改定されました.その総論には「新たな調査方法等の採用に当たっては,国土技術政策総合研究所等による関連情報の収集・調査等によるほか,学識者や関係者等の意見を聞くことにより最新の調査方法,技術的知見,課題等を把握する作業を定期的に行い,調査編の内容を見直すこと」としており,産官学の連携を通じた河川管理技術の向上が期待されています.
このたび,河砂基準の環境分野の記載が,最新の学術的・技術的水準および現場実務での活用実態・実績を踏まえたうえで,必要かつ十分なレベルで適宜改定されるよう学識者や関係者等と意見交換を行うことを目的として第5回意見交換会が開催されます.
※傍聴について:傍聴希望者は傍聴可能です(会場の人数制約有り,先着順).ただし,傍聴者の発言はできません.
【内容】
応用生態学や保全生態学において,生物多様性を評価することは基本であり,特に種多様性に関しては多くの知見が積み重ねられてきた.しかし,種多様性を評価してきた多くの研究は,比較的小さな空間スケール(局所スケール)で観察される群集に注目し,その群集に含まれる種数(α多様性)や種構成に基づいた多様度指数のみを対象としてきた.一方,群集間にある種構成の違い(β多様性)やより大きな空間スケール(地域スケール)で観察される種数(γ多様性)についても,言及した研究は少ないのが現状である.局所スケールでの種数(α多様性)の減少は,必ずしも地域全体の種数(γ多様性)の減少を引き起こすわけではない.その一方で,局所スケールでの種数(α多様性)が増加したとしても地域全体の種数(γ多様性)が低下することもある.α多様性とγ多様性といった二つの指標が示す変化は,β多様性を考えることで理解することが可能であり,α・β・γ多様性といった3つの指標を一緒に考えることは種多様性を評価する上で重要だと考えられる.ただし,β多様性の計算方法は数多くあり,類似度もしくは非類似度といった名称で計算されることも多い.そこで,本自由集会では,これまで発表されてきたβ多様性を整理するとともに,それぞれの指標が何を意味するのかについて紹介する.そして,実際にβ多様性を用いて人為的インパクトを評価した研究例を紹介し,最後にβ多様性をどうやって使っていくべきなのか議論していきたい.
【プログラム】
■イントロ(20分)
「β多様性とは何をあらわしているのか?」森 照貴(東京大学)
■話題提供(各20分×4)
「氾濫原における水域の孤立化が植物群集に及ぼす影響」片桐 浩司(土木研究所)
「河川における流域の農地利用が底生動物群集に及ぼす間接的影響」末吉 正尚(土木研究所)
「農地における土地利用の変化が植物―植生性昆虫群集に及ぼす影響」内田 圭 (東京大学)
「河川におけるダムの存在が底生動物群集に及ぼす影響」森 照貴 (東京大学)
■議論(20分)
【内容】
河川生態を理解するためには,実際の河川に見られる様々な事物や事象を直接的に観察・観測する活動が基礎となる.しかしながら,河川は複雑かつ変動的な対象であり,現場では捉えにくく感じ取りにくい多くの要素から成立している.本自由集会では,「博物館における河川生態の展示・教材化」や「河川生態を利用した実践・体験型学習」の取り組みを紹介いただきながら,河川生態を分かり易く伝える意義を再確認し,その方法について議論したい.
昨年度大会で企画・実施した「応用生態工学ならではの魅力ある普及・啓発コンテンツとは?」とその後の議論の整理から,テーマを絞って展開する.
【プログラム】
趣旨説明:田代 喬(名古屋大学)
話題提供1:河川生態の展示・教材化:三橋弘宗(兵庫県立人と自然の博物館)
話題提供2:河川生態を利用した実践・体験型学習:野崎健太郎(椙山女学園大学)
事例報告:映像メディアの活用:渡辺友美(お茶の水女子大学・早稲田大学)
総合討議:方法論の整理・捉え方と見せ方:吉冨友恭(東京学芸大学)
コメント:ホームページコンテンツなどへの展開:沖津二朗(応用地質)
【内容】
応用生態工学に関わる研究者・技術者が,河川環境保全の現場に関わる機会は,年々増えてきている.とくに,生態学,河川工学分野の研究者においては,現場に携わる場面が増えるにつれて,専門的な見地から如何に有効な助言をできるのかという点で,その存在意義が問われているのではないだろうか?その一方で,研究者の助言が,現場において有効に機能しない状況や,技術者の提案が発注者に受け入れられにくい状況があったりもする.また,関係者間のコミュニケーションがうまくいったとしても,その他の要因によって,保全目標が達成できないケースや,結果の検証がなされていないケースもあるだろう.
そこで,本自由集会では,河川環境保全に向けた取り組みが有効に機能するために研究者・技術者が留意するべきことを明確にすることを目的とする.そのために,我が国における取り組みの黎明期から現場に関わってきた研究者・技術者による異なる視点の経験談から,「河川環境保全の現場への関わり方」についての課題と対応策を抽出し,総合討論を通じて共有したい.そして,応用生態工学会の若い世代の研究者・技術者が,河川環境保全の現場でより活躍していける道筋を探りたい.
【プログラム】
1.趣旨説明(10 分)
河川工学の立場から:原田守啓(岐阜大)
生態学の立場から:久米学(京都大)
2.話題提供(20 分+質疑5 分)
1)佐川志朗(兵庫県立大):(仮)検証可能な調査デザイン,現場の苦労
2)鬼倉徳雄(九州大):(仮)生態学者としての現場への関わり方と闘い方
3)渡辺敏(ウエスコ):(仮)コンサルタント業務を通じた河川環境保全の提案の仕方
3.総合討論(35 分)
【企画者】 田和康太(兵庫県立大学)・佐川志朗(兵庫県立大学/兵庫県立コウノトリの郷公園)・河口洋一(徳島大学)
【日時・場所】 9月3日(土) 15:45〜17:45 一条ホール
【内容】
水田とその周辺の農業水路やため池,承水路などで構成される水域はいわば水田水域と呼べるものであり,これらの連続性の高い水域では,豊かな生物多様性が維持されてきた.このことは,弥生時代以降,人間が後背湿地を水田に作り変えたことで,かつて後背湿地に生息していた多種の生物が,水田を代替生息地として利用したためと考えられている.しかし,全国的な傾向として,戦後の強毒性農薬の使用や1960年代から本格化した圃場整備事業による水田水域の連続性消失,中山間部での耕作放棄の進行等により,水田水域における生物多様性は大幅に低下した.そうした中,1990年代以降,全国的な水田の生物多様性保全に対する観点の高まりとともに,減・無農薬栽培や湿田および未整備の水田の特性を生かした工法と農法によって様々な取り組みが実施され,その効果が期待されている.本集会では,水田水域に生息する生物を対象とした各地の取り組みとそれらの工法や農法に対する定量的評価の結果を紹介し,水田水域における生物の保全を将来的にどのような手段で進めていくべきか議論する.今後,本集会のシリーズ化を予定しており,初回では,鳥類や魚類といった大型種を中心とした保全事例に着目する.
【プログラム】
趣旨説明(田和康太・佐川志朗・河口洋一)5分
話題提供
<鳥類> 40分
コウノトリ野生復帰地における取り組みとその効果(佐川志朗(兵庫県立大学/兵庫県立コウノトリの郷公園))
トキ野生復帰地における取り組みとその効果(関島恒夫(新潟大学))
<魚類> 45分
海域から水田域までのエコロジカルネットワークの確保による魚類群集の保全−鎌谷川を事例に−
(田和康太(兵庫県立大学))
魚のゆりかご水田の取り組みとその効果(皆川明子(滋賀県立大学))
農業水路におけるスイゲンゼニタナゴの保全に向けて(中田和義(岡山大学))
総合討論(司会:河口洋一(徳島大学))25分
コメント(江崎保男(兵庫県立大学/兵庫県立コウノトリの郷公園))5分
【企画者】 島谷幸宏(九州大学)
【日時・場所】 9月3日(土) 15:45〜17:45 第8講義室
【内容】
国土交通省河川砂防技術研究開発,河川生態分野の公募研究に平成26年度採択された菊池川流域の研究成果の発表です.
菊池川は,九州中部に位置する流域面積約1,000?の河川で,源流域は阿蘇火砕流の影響を受け流域地質は複雑で,下流域は盆地と平野があり絶滅の危機に瀕する2枚貝やタナゴ類が生息する氾濫原です.
集会では渓流域,氾濫原域について発表します.渓流域では溶結凝灰岩,花崗岩,安山岩,泥質片岩の4種類の地質により,渓流形態が異なり,そこに生息する生物も地質の影響を受けていることを発表します.氾濫原では二枚貝やタナゴ類の現状,氾濫原生態系を保全するための方法について発表します.その後,討論を行いたいと思います.
【プログラム】
・研究の概要
・渓流の形態と生物相
・氾濫原の現状と氾濫原依存生物の保全手法