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応用生態工学 12(2), 131-140, 2009

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事例研究 CASE STUDY

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大都市圏の農業取水堰周辺における河床変動とその魚類移動への影響に関する一考察

常住 直人*・後藤 真宏・浪平 篤

農業・食品産業技術総合研究機構農村工学研究所 〒305-8609 茨城県つくば市観音台2−1−6

Naoto TSUNESUMI*, Masahiro GOTOU, and Atsushi NAMIHIRA : Study on physical in fluences to fish migration at irrigation weirs by riverbeds transition in a suburban area. Ecol. Civil Eng.12(2), 131-140, 2009.

National Institute of Rural Engineering, National Agriculture and Food Research Organization, 2-1-6, Kannondai, Tsukuba-shi, Ibaraki-ken, 305-8609, Japan

摘要

 本報文では比較的早期に堰の合口(小規模堰の統合),大規模化が進められ,経年的に堰落差が大きくなっている可能性が高い,かつ長期の河床変動の知見が得られやすい大都市近郊圏(中京圏)の農業取水堰のうち,特に生物移動の障害となりやすい中下流の大規模堰21カ所について,周辺河床や堰落差の経年変化について調査,分析を行い,堰による生物移動分断の現況と将来動向について検討を行った.その結果,以下の諸点が明らかとなった.
1)中京圏の河川では過去の一時期に広範に河床低下が進行している事例が多く見られる.この河床低下は,高度成長期を跨ぐ時期に著しくなっており,この時期の経済活動の活発化(砂利採取等)など人為的要因に依る可能性が高い.
2)取水堰地点では,河床低下の影響を受けたと見られる堰直下落差の増大が見られ,護床下流端で当初より平均2.4m低下している.
3)堰下流の護床は,落差増大に伴い,延長が平均2.1倍に延伸され,勾配は当初のフラットから平均1/17.3と渓流河川並みに急勾配化している.
4)護床の急勾配化に対し,魚の遡上を図るため,魚道下流口の下流移設が成され,その延長は当初より平均2倍となっているものの,魚道内勾配は従前程度に維持れている.
5)しかし,急勾配化した護床では,護床面の低下が漸次進む可能性があり,その場合,集魚位置が上流に移動するので,魚道下流口を再度上流に戻す必要が生じる.この際の魚道勾配は,平均1/3.9まで急勾配化する可能性がある.これにより魚道の急勾配化や狭隘スペースでのスイッチバック施工など技術的な問題を生じうる.

line 2008年3月24日受付,2009年9月7日受理
* e-mail: azum@affrc.go.jp line


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