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応用生態工学 9(1), 1-2, 2006

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巻頭言 PREFACE

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応用生態工学編集委員長就任にあたって

浅枝 隆

応用生態工学編集委員長
埼玉大学大学院理工学研究科環境制御工学専攻 〒338-0825 さいたま市桜区下大久保255

Takashi ASAEDA: Note from the new editor in chief. Ecol. Civil. Eng. 9(1), 1-2, 2006.

Chief Editor, Ecology and Civil Engineering, Research Group of Forest Management and Conservation, Graduate School of Science and Engineering, Saitama University, Shimo-Okubo 255, Sakura-ku, Saitama 338-8570, Japan

 応用生態工学会は発足以来今年で10年を迎えます.様々な形での国土の管理のあり方を求める土木工学と,その中で最も重要かつ解決の難しい課題である生態現象の解明を旨とする生態学の間のコミュニケーションを活発にし,引いては融合した分野をめざす,極めて画期的な試みであるといえます.ところが,そうした中で発足した論文集「応用生態工学」においては,幾多の解決すべき問題が山積みであるといえます.
 まず,土木工学が本来,物理現象の解明を土台として発展した学問であるのに対し,生態学の基本は生物学や化学に置かれています.これは前者が,事象の基本的原理の理解に重きを置いているのに対し,後者においては,その複雑なプロセスにも重要な課題が秘められています.また,生物現象が元々幅をもった現象であり,関与する要素の数も壮大なものであるのに対して,土木工学で取り扱う現象において関与する要素は比較的限られていることから,土木工学が比較的決定論的に論を作り上げていくのに対し,生態学では確率に基づいて話を進めざるを得ない場合が多く,また実証された事実に基づいて考察されなければならない部分が存在します.
 さらに,前者が工学の一分野であり,後者が理学や農学の分野に属してきたことも,論の組み立てに大きな隔たりを生む原因になっているように思われます.すなわち,前者では,利用可能な段階にまで発展させるために,十分な証明が行われないまま利用しなければならない場合が多いのに対して,本来現象解明を旨とする分野においては,明確に理解されたものの上にのみ,積み上げが可能になります.
 加えて,発表論文に対する意識にも大きな隔たりがあるように思われます.こうしたことから,これまで論文のスタイルも大きく異なっており,また,論文として発表する段階の設定にも格段の差があります.こうした背景から,相互に理解できる形に仕立てていくには,互いに相手方の分野の学問としてのなりたちを理解し,また,技術的には,相互理解が可能な論文としてのスタイルを作り上げていく必要があるでしょう.また,どの段階の論文であるかということに関しても十分な仕分けが必要なように思われます.
 以上のようなことから,新しい分野の形成をめざす,応用生態工学においては,これまでにも,論文の執筆方法に関するセミナーを開催したり,新しいジャンルの設定,応用生態工学のあり方についての討論会を開催するなど,こうしたギャップを埋める様々なことを行ってきました.今後も,論文執筆の指導を行うことや,論文の査読の段階においても,内容を重視し論理の進め方等の修正可能な部分に関しては新しい分野にふさわしいスタイルに修正をお願いするなど,可能な限り便宜を図っていきたいと考えています.
 さて,応用生態工学の役割を考えた場合,その課題は,元々,研究者が研究を進めるために設定される内容よりも,実際の仕事の中に求められていくべきと考えられます.その意味では,様々な実際の業務の中にも,また,委員会等の公の会合に中で示される結果の中にも,応用生態工学の発展に大きく貢献する内容が多数含まれていると考えられます.様々な機会を利用し,こうした内容に発展すると考えられる仕事に遭遇された場合には,是非,論文としての投稿を担当者にお願いいただいたり,また,奨励いただければ幸いに存じます.

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