事例研究 CASE STUDY
RHS・HQAを用いた河川環境評価:埼玉県・神流川の下久保ダム下流区間での事例
中嶋 崇志1)*・山下 雄二1)・金山 明広2)
1) 株式会社環境科学コーポレーション関東事業所 〒370-1406 群馬県藤岡市浄法寺456
2) 独立行政法人水資源機構ダム事業部設計課 〒330-6008 埼玉県さいたま市中央区新都心11番地2 ランド・アクシスタワー内
2) JAPAN WATER AGENCY Dam Engineering Division, Dam Project Department, 11-2 Shintoshin, Chuo-ku, Saitama-shi, Saitama, 330-6008, Japan
摘要
国内の河川生態系に関する全国的な調査においては, 河川環境に生息する動植物に関する詳細なデータが採取されている. しかしながら, ハビタットの評価に関する手法は未だ確立されていない. 本論は埼玉県, 神流川流域の下久保ダム下流区間の約10kmを対象とし, イギリスで開発されたRiver Habitat Survey(RHS)及びそのスコアリングシステムであるHabitat Quality Assessment(HQA)を用いて, 河川環境の評価を行った. 調査対象区間は下久保ダム直下を調査始点(0.0km)とし, その下流側10kmの区間とした. 下久保ダムの下流約2kmの範囲には, 国指定名勝・天然記念物に指定されている三波石峡がある. RHSによる調査により三波石峡区間には希少な環境要素を多く含むことが明らかとなった.
HQAによる得点の平均値は42点, 最小は33点(9.5-10km), 最大は54点(2.0-2.5km)であった. HQA得点で上位20%に含まれるサイトは, 2.0-2.5km, 2.5-3.0km, 7.0-7.5km, 8.5-9.0kmの4サイトであり, これらを環境保全サイトと評価することができた.
RHSにより天然記念物に指定されている場所を希少サイトとして特定することはできたが, それらにおけるHQA得点はさほど高くはなく, 上位20%の環境保全サイトにはふくまれなかった.
2008年6月30日受付, 2010年3月28日受理
* e-mail: t.nakajima@asahi-kg.co.jp
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