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応用生態工学 15(2), 257-267, 2012

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事例研究 CASE STUDY

ネコギギの生息環境と個体群動態:保全のための基礎的知見として


一柳 英隆1)4)*・渡辺 勝敏2)・森 誠一3)

1) 財団法人ダム水源地環境整備センター 〒102-0083 東京都千代田区麹町2-14-2
2) 京都大学大学院 理学研究科 〒606-8502 京都市左京区北白川追分町
3) 岐阜経済大学 〒503-8550 大垣市北方町5-50
4) 九州大学大学院工学研究院 環境社会部門 〒819-0395 福岡市西区元岡744

Hidetaka ICHIYANAGI1)4)*, Katsutoshi WATANABE2), Seiichi MORI3) : Habitats and population dynamics of the bagrid catfish Pseudobagrus ichikawai : as the basic knowledge for conservation. Ecol. Civil Eng. 15(2), 257-267, 2012.

1) Water Resources Environment Technology Center, 2-14-2 Kojimachi, Chiyoda-ku, Tokyuo 102-0083, Japan
2) Department of Zoology, Division of Biological Science, Graduate School of Science, Kyoto University, Kitashirakawa-Oiwakecho, Sakyo-ku, Kyoto 606-8502, Japan
3) Gifu Keizai University, 5-50 Kitagatacho, Ogaki, Gifu 503-8550, Japan
4) Department of Urvan and Environmental Engineering, Graduate School of Engineering, Kyushu University, 744 Motooka, Nishi-ku,Fukuoka 819-0395, Japan

摘要

天然記念物の純淡水魚ネコギギに関して,一つの事業で行われた生息環境に関するマルチスケールでの調査と個体群の構造や変動に関する調査の結果概要を紹介した.河川スケールでは河川規模に応じた適切な勾配の場所,淵スケールでは流速が遅く,間隙が多い大きな淵,微細スケールでは流れが遅い場所に奥行きがある間隙が存在する場所で,ネコギギが確認される確率が高かった.個体数変動は流域内で同調的であるが地域によって変動の大きさが異なっており,相対的に河川規模が小さな場所と比べて,中程度の場所で大きかった.この個体数変動の大きさは,生息環境である大きな間隙の安定性と関係している可能性があった.ネコギギの保全には,まず,大きな淵内の流速が遅い場所に安定的な間隙を作ることが必要であると考えられる.さらに淵の個体群動態の特性を考慮して連結性を重視したり,淵の大きさを重視したりするなどの判断も必要になる.ネコギギに関しては,保全の基礎的な情報としての生態学的な知見はかなり蓄積されてきている.今からは,水理工学的・個体群生態学的検討を連結して進めつつ,現場での保全や復元行為を進めていくことに力点を置く段階にあると思われる.

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2012年6月1日受付, 2012年11月14日受理
* e-mail: nagi@hb.tp1.jp

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