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応用生態工学 15(1), 101-107, 2012
事例研究 CASE STUDY
山地渓流に設置された農業用取水堰の特徴 −魚類の移動阻害に関する比較−
大浜 秀規1)* ・ 青柳 敏裕2) ・ 芦津 晃彦2)
1)山梨県水産技術センター忍野支所 〒401-0511 山梨県南都留郡忍野村忍草3098-1
2)山梨県水産技術センター 〒400-0121 山梨県甲斐市牛句497
2) YamanashiPrefectural Fisheries Technology Center, Ushiku 497, Kai, Yamanshi 400-0121, Japan
摘要
農業用取水施設の設置状況と魚類の遡上可否に関し調査を行い,魚類にとって好ましい取水方法について検討を行った.
農業用取水施設として山梨県の波木井Jll9箇所,常葉川12箇所,芦川11箇所,亀沢Jll6箇所,塩川10箇所の計48箇所を調査した.
堰堤のある取水でも, 堰の上流に斜め堰を設置している場合が65%あった. 取水施設別の遡上可能率は,堰堤がない場合93%,堰堤に魚道がある場合25%,堰堤に魚道がない場合8%であった. また施設の構造物別の遡上可能率は斜め堰が97%,魚道が25%,堰堤が7%であった. 堰堤の遡上制限要因は落差の83%が一番高かった. 堰堤への魚道設置率は24%であったが,魚道機能の低下が,全ての魚道で認められた. 9種439尾の魚類が施設周辺で採捕され,農業用取水施設周辺で魚類の生息していることが確認された.
堰堤だけで安定的に取水するのは難しく,斜め堰が多くの取水に設置されていた. 斜め堰と堤外水路による取水は,流路の維持等管理の手間はかかると思われるが,取水位置が適切ならば,安定的に取水でき魚類の遡上を妨げず環境を改変しない取水方法と考えられた.
2011年12月3日受付, 2012年4月3日受理
*e-mail: oohama-sdj@pref.yamanashi.lg.jp
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