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応用生態工学 14(1), 63-74, 2011
事例研究 CASE STUDY
ダム下流河川における試験湛水時の流量制御, その後の粗流化と土砂還元に伴う底生動物の変化 −11年間にわたる三春ダム下流河川のモニタリング結果−
西田 守一1)* ・ 浅見 和弘2) ・ 石澤 伸彰1) ・ 熊澤 一正2) ・ 中沢 重一3)
1) 応用地質株式会社 エンジニアリング本部 〒331-8688 埼玉県さいたま市北区土呂町2-61-5
2)応用地質株式会社 応用生態工学研究所 〒963-7722 福島県田村郡三春町大字西方字石畑275
3)国土交通省東北地方整備局三春ダム管理所 〒963-7722 福島県田村郡三春町大字西方字中ノ内403-4
2) OYD Corpoylation, Ecology and Civil Engineering Research Institutes, 275 Aza Ishibata Oaza Nishikata, Miharu-machi, Tamura-gun, Fukushima 963-7722, Japan
3) Miharu Dam Management Office, 403-4 Aza Nakanouchi Oaza Nishikata, Miharu-machi, Tamura-gun, Fukushima 963-7722, Japan
摘要
福島県阿武隈川水系大滝根川に建設された三春ダムでは, ダム運用開始1年後の1999年より, ダム下流への土砂還元を実施している. 今回, 試験湛水中の1997年からダム管理以降後の2007年まで, 流況, 河床構成材料などの物理環境の変化と底生動物の応答を調べた.
その結果, 三春ダムでみられたダム下流における底生動物の変化は, 水温の変化, 濁度の変化, ダム湖によるプランクトン生産の影響, ダム運用開始後の流量制御による影響は小さく, 試験湛水中の流量制御と河床構成材料の変化が大きな要因と考えられた.
試験湛水中の流量制御については, 試験湛水に伴うダム下流の流量の低下, 試験湛水の水位低下に伴う放流による影響で個体数や種数が減少したと推察された. 三春ダム運用後, 下流への放流量は, 出水時を除けば流入量と放流量は概ね同じことが多く, 底生動物も回復した.
河床構成材料の変化については, ダム下流の河床構成材料の粗粒化に伴い掘潜型の底生動物の減少がみられた.その後は, 土砂還元の実施により, 粗粒化が回復し, 掘潜型の底生動物の増加もみられたことから, 土砂還元の実施により様々な底生動物の生息可能な環境が備わってきていると考えられた.
* e-mail: nishida-morikaza@oyonet.oyo.co.jp
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