![]() |
| Home | > ニュースレター >バックナンバーNo.1-12 >ニュースレター12号-3 |
|
|
応用生態工学会ニュースレター No.12Ecology and Civil Engineering Society(ECES)
平成12年度「海外学会等への派遣」を通じ、標記、国際シンポジウムへ他の2名の会員とともに派遣研究員として 参加させていただきました。本誌紙面をお借りして、会員の皆様に報告いたします。 1) EISORS とはEISORS とは、Eighth International Symposium of Regulated Stream の略で、 流況制御河川における生態系の回復と今後の河川管理のあり方を議論するために開催された国際シンポジウムです。 シンポジウム開催の最大の目的は、生態系の研究者・技術者と河川工学者・河川技術者との意見交換・情報交流にあり、 応用生態工学研究会の目的・活動と類似しています。今回のシンポジウムは、標題のとおり第8回目であり、 フランスのハイテク産業都市ツールーズにおいて、2000年7月17日〜21日の5日間にわたって行なわれました。 参加者もヨーロッパ、アメリカ、オセアニア、アジアからと多岐にわたり、日本からも私達3人を含め11人が参加しました。 本研究会の会員としては、名古屋大学の辻本先生、大阪府立大学の谷田先生、土木研究所の萱場さん、同じく土木研究所の皆川さん・ 島谷さんがオーラル・セッションにて論文発表をされました。 また、派遣研究員として参加した寺本さんも辻本先生らとともにポスター・セッションにて日本の研究事例を報告されました。 シンポジウムは、初日の総合セッションに始まり、2日目以降は流況、魚類群集、地形・水理、サーモン、底生動物、多様性、 水質、植生の8つのテーマ別に発表、討論が繰り広げられました。 2) シンポジウムにみる河川生態研究の現状と今後河川管理の方向性本シンポジウムでは、各国から河川生態研究の最新の事例が報告されるとともに、河川管理・河川環境復元の今後のあり方に関して 活発な討論が行われました。水質悪化、上下流方向の河川分断、河川形状の単調化、流況の安定、土砂量の変化、 外来種の問題と諸外国が直面する河川管理・河川環境復元上の問題点は我が国と共通する部分が多く、 河川管理や河川環境復元における課題は世界共通であることをあらためて実感しました。 ここでは、私が参加した分科会のうち、「魚類群集」、「底生動物」より河川生態研究の現状を紹介するとともに、 これらを含め総合セッションにおける討論内容から今後の河川管理の方向性について述べたいと思います。 (1) 河川生態研究の現状表1は、水生動物に係る2つのセッション、魚類群集と底生動物25論文に関し、そのキーワードを項目別に整理したものです。 表1 魚類群集・底生動物研究にみるキーワード分類
表1からわかるとおり、横断工作物による洪水の減少、河床の低下、有機物量の変化や河川の連続性の分断が 水生動物群集に与える影響を論じたものが多く、その原因と水生動物のレスポンスを定量的に把握することによって、 具体的な復元技術へと応用することを目的とした応用生態工学的な研究が世界における研究のトレンドであることを認識しました。 我が国においても、「ダムの弾力的運用」や「土砂フラシュ」等河川生態の復元のためのさまざまな方策が実施されつつ ありますが、これらの方策を今後進めていくうえで、参考となるような発表も目立ちました。その一つに multi- year man-agement が挙げられます(T.Modde )。これは、年によってフラッシュ放流の時期を変えながらダム運用を 行っていく考え方です。洪水を利用して産卵期に氾濫原に移動する2種の魚類がダム下流に生息しており、 この2種が異なる時期に発生する洪水を利用している事実から考えられたアイデアです。 我が国におけるダムの弾力的運用においても、放流量とその効果を確かめるとともに、 その時期や頻度についての研究が今後進められていく必要性を感じました。また、放流時期の検討の必要性に関連して、 semi- natural/artificial floods という新しいダム放流の有効性を述べたものがありました(谷田)。 これは、現在考えられている、または、実施されているフラッシュ放流が洪水貯水容量に水をためて、 ある時期にまとめて放流する形態をとるのに対し(artificial floods )、 洪水時に全流量をカットするのではなく、洪水にタイミングを合わせてあるまとまった流量を放流することで、 より自然に近い洪水を再現できるというアイデアです。安全面での検討が今以上に要求されますが、 「自然環境の保全」が河川管理の目的の一つとなった今、安全面をクリアできるようなより精度の高い予測技術を開発し、 新しい形態のダム運用が検討されていくことが望まれます。 (2)今後の河川管理の方向性本シンポジウムでは、(1)で紹介した河川管理上の個別の手法論が議論されるとともに、 河川管理を考える上での枠組みに関しても討論されました。参加者の意見を大まかにとりまとめると今後の河川管理の方向性は 以下のとおりです。 第1に、河川管理という概念を流水管理からランドスケープ・マネージメントへと拡大させていく必要性があること (J.Ward 、辻本)、第2に、河川を上流から河口まで、表流水から地下水までといった具合に、水の流れを一つの集合体、 あるいは連続体として捉える必要があること(J.Ward 他)、第3に今後は、コスト・パフォーマンスに配慮した経済性を 重視した管理のあり方を考えていく必要性があること(M.Reich )、以上3点に集約されます。 ランドスケープ・マネージメントへの拡大は、流水の影響が河川及びその周辺の空間構成要素にも影響を与えていることから、 これらの空間構成要素も念頭においた管理の必要性に言及したもので、我が国でも河道内の樹木化が顕著化していることや、 河畔林等水辺林の生態的機能の重要性がいわれている今日、河川管理の一つの柱としてすえるべきコンセプトであると感じました。 また、2点目は、我が国においても流域一貫の思想に基づく河川管理の重要性が指摘されており、 まさに、管理の枠組みの一つとして重要な概念であると思いました。 3点目の経済的観点の導入は、今後、管理や環境保全体策が具体化されていくにつれ、 その重要性が高まることは必然的な流れであると感じました。今日、我が国の多自然型川づくりにおいても、 「川がつくる川」を目指した川づくりが基本となりつつありますが、結果としてローコストな川づくりにつながる考え方 であると思います。 3) シンポジウムに参加して今回、EISORS に参加して感じたことは、河川管理や河川環境保全に関して各国が抱える問題は共通であり、河川生態研究の動向や河川管理・河川における環境保全体策の方向性が類似していることでした。また、皆川さんらが発表した多摩川における河川生態研究がシンポジウムの講評・まとめに取り上げられるなど、日本人研究者が諸外国に向けて積極的に河川管理・河川生態研究の成果を発信していることも印象的であり、個人的にも触発されました。 今後は、諸外国との情報交換を個人としても、また、会としても積極的に推進し、世界共通である河川管理上の問題点を一つずつ解決していくことが必要であると感じました。本シンポジウム開催の立て役者の一人であるG.Petts 氏によると、防災面でヨーロッパ諸国と事情が異なる日本の河川をセッションの一つとして独立させて議論することも考えているようでした。 最後になりましたが、本研究会を通して、国際シンポジウム参加という貴重な体験させていただきましたことを会員各位にお礼申し上げます。
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| このページのTopへ戻る | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| Copyright (C) 1999- Ecology and Civil Engineering Society ECES-OFFICE |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||