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応用生態工学会ニュースレター No.12Ecology and Civil Engineering Society(ECES)
第4回研究発表会は6つのセッションで計32題の講演があった。講演要旨集は年々立派になり、 これに目を通すだけでも応用生態工学が今、何を課題にしているのかが概観できる。 もちろん講演内容の充実にも目を見張るものがある。 第1セッション「ハビタットの生成と物理環境」(7題)では、瀬、淵、河原、ワンドなど河川のハビタットの形成を 水理学的に解明した報告のほか、周辺の土地利用を視野に入れることやそのようなハビタットが繰り返し形成されるシステムを 維持することの重要性が指摘された。 第2セッション「ハビタットの機能」(7題)は、 さまざまなハビタットを生物たちがどのように利用しているかについての報告が続いた。対象生物群は水生昆虫、魚類、水鳥、 哺乳類にわたる。種個体群の存続や種の多様性の維持に必要なハビタットの構造と環境のダイナミズムの重要性が強調された。 第3セッションは「河口・汽水域」(5題)。 塩分条件が大きく変化する環境の中で河口・汽水域の生物がどのような生活史を繰り広げているかを解明した研究は、 人間活動により危機的状況にあるこれらの環境における保全・復元の取り組みの基礎となるものであろう。 第4セッション「保全と復元」(7題)では、甲殻類、昆虫、魚類、植物などさまざまな生物を守る研究が報告された。 生態学的研究の結果が、絶滅危惧種の保全に向けて公共事業や水管理のあり方を変えようとしている事例も報告された。 応用生態工学研究会の目標が少しずつではあるが実現しつつあると感じられるセッションであった。 第5セッション「総合評価と管理」(4題)では、公開シンポジウムの演者カー博士が提案する IBI (Index of Biological Integrity )を日本の川に適用する試み、さまざまなデータをどのように解析し河川管理に 生かしてゆくかについての内外の取り組みが紹介された。 最後の第6セッションは地元「琵琶湖」の話題が取り上げられ、カワヒバリガイの分布拡大と底生生物の現況が報告された。 個々の講演の評価については異論もあろうが、2日間にわたる研究発表を聞いて、 応用生態工学の名にふさわしい新しい視点の研究が着実に増えていることを実感した。 特に、今までは生態学者がやっていたような調査を工学部系の人たちが行い、顔負けの成果が挙がっていることに強い印象を 受けたのは私だけだろうか。これが良いことか否かについては意見は分かれるだろが、 生態学と土木工学の共通の土俵が広がっていることは確かである。これらの取り組みをどのように発展させ、 保全・復元の現場に生かしてゆけるかが、当研究会の正念場であろう。 (神戸大学理学部 角野康郎)
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