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応用生態工学会ニュースレター No.9Ecological and Civil Engineering Society(ECES)
熊野事務局長から研究会の発表を全部聞いていた人が少ないので、名簿をみたら最も通して参加していたから 何か感想を書いてくれという依頼が舞い込んだ。筆者も発表者の内容を全部を聞いていたわけではないのだが 感想でよいということなので断り切れずお引き受けすることとした。 ミニシンポジウムを除く、一般講演を対象にして今回は河川工学・土木系の視点から述べてもらうというものであった。 さて、発表内容があまりに多岐にわたっていてジャンル区分をして議論すべきであろうが、河川生態基礎研究、 河川環境、陸域生態環境および水産動物の4つに区分されていることを全体として概観し、論評をするには負担が重すぎる。 従って、発表論文で印象に残り、かつ、私の興味を優先して述べさせていただくことにした。 まず、発表件数21件中約半分は土木系の立場からの現場における実証的、実験的な調査・研究が多かった。 全体を通しての印象は、土木系の発表は生物系・生態学の分野の方々の前で審査を受けているような緊張した印象を受けた。 近年いきものの視点で川づくりをするようになって土木系も生態系に関わることを学び経験を積んできたとは言え、 基礎的研究が異なる分野の研究者が互いに異なる専門家の前で専門外のことまで対象にした発表内容は、 学際的であると同時に、冒険的でもあり、実際、落ち着いた気持ちでは聞くことはできず絶えず緊張感ある気持ちで聞くことが多かった。 この研究会での議論は土木学会で議論するときのような片肺的な議論でなく、双方向性のある議論が期待できることであった。 境界領域の問題であるから遠慮のようなものもあったかもしれない。 しかし、反対に知らないことに起因する大胆さを互いに感じたのではなかろうか。 さて、印象に残った発表の中から、はじめに、近畿地方におけるダムの特性と水鳥群衆の関係について山岸先生の発表は 大変興味深く聞くことができた。近畿地方のダムを舞台に水鳥の調査法について鳥の種類構成の短期的変化と長期的変化について 調査・検討された内容であった。水辺の国勢調査が実施され膨大なデータが蓄積されているが、先生らの独自調査によれば1日1回 の調査ではヒドリガモなどつかまらない鳥がいることを具体的なデータで示された。 また、ラインセンサス法ではボートから湖面の観察と陸上からの観察では確認個体数に大きな差があること。 現在、水辺の国勢調査で実施されているラインセンサス法では陸上からは視認できない水面があるため不正確ではないか。 したがって、鳥の調査では水辺の国勢調査はあてにならないということであった。 湖上からの観察結果が、陸上より数倍高いということである。調査法の今後の検討が望まれる。 竹門先生の凍結コアによる河床間隙動物調査はユニークな調査で大変興味深く聞くことができた。 この研究は河川の砂州が河川水の濾過装置として機能を果たしていることを調査するため礫河床だと通常のコアーサンプリングが難しい。 そこで、埋設した鋼製管内に液体窒素を注入し、河床間隙水を底質ごとに凍結させて採取する方法である。 この凍結管を引き抜く際、抜け落ち防止のためにイボのをつけたものと、無いものによる比較を行っている。 まだ、スタートしたばかりの研究であり、間隙動物の深度別分布などが明らかになることを期待したい。 この調査になぜ興味を持ったかというと、昭和50年中頃、礫間浄化施設を作り、 礫層の中にあらかじめコアーサンプリング籠を入れて置いて水生動物調査を行ったことがあった。 是非、現在各地で作られている礫間浄化施設と濾過装置としての砂州と比較された評価を期待したい。 今本さんの大規模な岩盤法面緑化の現状と今後の課題はダムなどを建設した際の法面の緑化について植生の出現種、 植被率から施工後の多様度の変化を切土地区、盛土地区別に説明した。30数年前の施工直後から植生遷移を意識して 調査をしていたのかどうかは不明であるが、大変説得力のあるデータになったのではないかと思う。 多様度だけでみれば外来草本主体の緑化工を実施した切土地区、盛土地区で低く、緑化工を実施していない硬質岩盤で高い。 また、これらの外来草本主体の緑化工は施工後10年以上しても在来種への移行を妨げていることがわかった。 そして、特段の緑化をしない方が約30年もすれば良好な自然林へ移行しているため今後、 人工的な緑化はしない方が望ましいという結論であった。 この発表をお聞きして感じたことは、なぜもっと植物生態学の専門家と土木は一緒にやれなかったのか残念であった。 恐らく植生の生態遷移に関する知識や外来種植生の問題点については明るい先生は沢山いたのではないかと。 しかし、これでは今までの法面緑化は否定的なことになるのであえて言及するが、 風化岩盤では法面の滑落や崩落防止にも役だったのではなかろうか。 多自然型川づくりに関わる発表内容としてまとめて議論することとすると積丹川でのサクラマス、 石狩川・尻別川でのカワヤツメに関する調査結果があった。また、真駒内川の河川改修工事と底生魚に関する調査結果が報告された。 これらの内容は魚類の生息環境としての瀬、淵を造成したり、各種の河川工法を実施したあとの、生息密度を調査し、 流速、水深などの物理量との関係、河床礫の状態などとの関係で述べられた。 即ち、魚類のマイクロハビタットを数量的にその効果を示そうとしたものである。 本来、生態系の分野からこれらについての議論がもっとされてもよかったが少ないように思えた。 筆者の感想では、各河川にはオリジナルな特性があり、人為的な攪乱(各種の河川工事など)の以前にどのような生息密度 (魚種、現存量なども)であり、調査期間中の洪水など自然の攪乱がどのような頻度であったのかといった時間スケールの 説明が欲しかった。これらの課題に関しては知花さんの魚類生息域適性曲線に関する考察と題した研究成果や島谷さんの 自然共生研究センターにおける生態系の実験河川の研究成果に期待したい。 多自然型河川の課題では、河川工学と河川生態学がフィールドを同じくしていながらここ8年程前まではほとんど無関係で 互いの研究が進められていたが、現場では敵対関係に近い状況であったことから考えればこのような議論ができるのは隔世の感がある。 ついでであるが、この夏、スイスで近自然工法の関係者とシンポジウムを持ったとき言われたことは、 日本の多自然の川づくりはパーツ、ツールだけにこだわりすぎている。パーツからシステムへ川を時空という4次元で把握すべきだと。 その他、長良川河口堰に関する調査結果は村上さん、奥田先生からの報告があった。 堰運用前後の貧酸素水塊の状態を建設省の観測データから明確なまでに説明された。 今後の物理的指標を含む生態系からの関連した研究者の見解に興味あるところである。
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