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応用生態工学会ニュースレター No.8
Ecological and Civil Engineering Society(ECES)
1999年8月10日 (火)発行
〔発行所〕応用生態工学研究会事務局 :
〒102-0083 東京都千代田区麹町4-5 第七麹町ビル 226号室
TEL. 03-5216-8401 FAX. 03-5216-8520
〔発行者〕応用生態工学研究会 (編集責任者: 幹事長 :谷田一三, 事務局代表 熊野可文)
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新著紹介
- 「流域一貫―森と川と人のつながりを求めて」中村太士、築地書館、本体2,400円:
本研究会の幹事でもある中村さんの単著。中村さんは、研究発表会や講座でも明解で鋭い論議や解説で知られているが、
この図書にも彼の面目がよく表れていて主張は明解でよく判る。流域を統一的にとらえる必要性は多くの人が理解しているが、
それを実践している研究者は少ない。中村さんは、釧路湿原や北海道の河川などで、具体的に流域一貫の研究を展開している。
それらの研究の紹介には教えられることが多い。米国オレゴンの森林河川管理やnew forestryの紹介も、
筆者のオレゴン州立大学での研究実践に裏付けられたもので示唆に富んでいる。応用生態工学研究会は、生態学と工学との境界領域に新しい知と
技術の創出を目指して発足した。中村さんの立場は、生態学や工学(砂防学)のいずれとも違ったもので、そもそもこの
境界領域の中心に立脚していることが、この本から理解できる。生物多様性を主要な課題にする保全生物学あるいは保全生態学に対して(あるいは加えて)
、景観生態学がこれからの河川流域管理に必要だとの議論もある程度は理解できる。もちろん、これらの2つの学問は対立する
考え方ではない。河川の研究者、管理者だけでなく、河川や自然の保護に興味のある市民にも必読の書である。とくに、市民の関わりと責任について
の中村さんの意見は傾聴に値する。白黒写真の印刷があまりよくないのと、本文と写真の位置がちぐはぐなものが多いのが悔やまれる。[谷田一三]
- 「貝のパラダイスー磯の貝たちの行動と生態」岩崎敬二、東海大学出版会、本体2,800円:
マイホーム、避暑地の別荘、サーフィン、家庭菜園、遊びの時間。いずれも私たちの憧れである。小さくて寡黙に見える磯の貝たちが、
私たちの夢を実現しているとは、この本を読むまでは知らなかった。著者はキクノハナガイに個体識別の印をつけて10日間以上の連続観察を
することで、貝の間の争いや順位制があることだけでなく、遊びとしか思われない行動をする優位個体の存在も示した。
直接観察や野外での操作実験によって、磯貝の生態学がここまで進んでいることを、岩崎さん自身の研究成果だけでなく、世界の最新の成果も含めて
示した好著である。貝の生活から人の生き様にもコメントがされ、その内容には彼の人柄がしのばれる。磯貝の研究は、1970年代から
生態学のなかでも先進的なものであり続けたが、さらに研究が進んでいることがよく判る。この本を読むことで、磯観察の幅が広がること間違いない。
沿岸開発や釣りを含む人為影響で磯の環境が危機に瀕していることも触れられているが、この部分については、もっと書き込んだ著者の
次の本を待ちたい。ちなみに、家庭菜園はカサガイの仲間が好物のらん藻を栽培し、なわばりを作って他の貝の侵入を防ぐという。[谷田一三]
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