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応用生態工学会ニュースレター No.4

Ecological and Civil Engineering Society(ECES)


1998年7月22日 (水) 発行
〔発行所〕応用生態工学研究会事務局 :
〒102-0083 東京都千代田区麹町4-5 第七麹町ビル 226号室
TEL. 03-5216-8401 FAX. 03-5216-8520
〔発行者〕応用生態工学研究会 (編集責任者: 幹事長 :谷田一三, 事務局代表 熊野可文)

6. いろいろなニュース


(1) 新著紹介

「トゲウオのいる川淡水の生態系を守る」 森誠一著、中公新書、1997年6月、680円(税別)
「魚から見た水環境-復元生態学に向けて/河川編一」 監修・編集森誠一、自然復元特集4、信山社サイテック、 1998年6月、2,800円(税別)

「魚から見た水環境」は、河川の自然復元に関わられる方に とって待望の善とも言える1冊である。 監修・編集者の森誠一さんは、 昨年6月に中公新書から「トゲウオのいる川」を出版されたばかりであり、 たいへんな活躍ぶりである。
「トゲウオのいる川」には、トゲウオ類の研究を通じて 地域住民と一体的に保護活動を展開するに至った経緯が詳しく記されている。 これからの水環境保全は、地域住民との連繋を基本とするべきであり、そうすることによって生きた文化を創出していこうとの 主張は、私の胸に深く響いた。 応用生態工学研究会が健全に機能して行くためには、 自然環境保全のための技術論に終始せず 森誠一氏の説く「住民―研究者―行政」の三位一体を尊重することが必要であると思う。
「トゲウオのいる川」でも、旧来の河川工学に生態学的な視点を導入した応用生態学の必要性や、 河川工事の事前事後に 生態調査を行ない工事結果を科学的に評価することの大切さが言及されていたが、 いわばその手本を示したのが「魚から見た水環境」であるといえよう。本書は総勢17人の魚類研究者が、河川環境の保全と復元に 際して考慮しなければならないなさまざまな課題を、淡水魚の事例から解説している。
第1章では、生態屋と土木屋の交流のあり方についても論じられている。これまで土木事業があまりにも生態学的視点を欠いていた ので、今はまず生態学的視点をいかにして効果的に土木事業に取り込めるかを主題とするというあたりは、 応用生態工学研究会の発足背景ともマッチしており興味深い。また、現行の環境アセスメントにおける貴重種主義批判や、 環境影響評価法や改正河川法に対する考え方についても耳を傾けるべき点がある。 さらに各論では、いくつかの土木事業について事前事後の魚類生息状況がデータで示されており、これまでの概念的なテキスト から一歩進んだと評価できる節が多い。 副題が「―復元生態学に向けて/河川編―」でありながら、 魚類しか取り上げていないのは片手落ちの感もあるが、 本研究会が目指している類の研究事例が豊富に盛り込まれているのは 確かである。(竹門康弘)

「利根川河口堰の流水環境に与えた影響調査報告書」 (財)日本自然保護協会発行、本体価格2,000円

長良川河口堰の運用開始、四国吉野川第十堰の建設など、可動堰を持つ河口堰は全国的に大きな注目を集めている。 水資源開発公団によって1971年に建設された利根川河口堰は、首都圏の用水として大きな機能を果たしていることに違いはない。 しかし、シジミの絶滅に40億円の追加補償をしたことからも判るように、環境に与えた影響は小さくはない。
この報告書は環境庁水質保全局の委託を受けた日本自然保護協会が、水質、生物、工学、社会学など多くの専門家に追跡調査を 依頼した結果のまとめである。公団の未公開資料、漁業者への新たな聞き取り結果も含めて、環境アセスメントやモニタリングの 第一の基本である、情報公開がこの報告書によってなされたことは、利根川河口堰問題にとっては大きな前進であろう。 建設当時に比べて、新たな環境調査の手法や知見も盛り込まれた 報告書となっている。 例えば、リモートセンシング、 数値シュミレーションなども試みられ、国内の河川には存在しないと考えられてきた ポタモ(河川)プランクトンについても、 まずは十分な調査がなされている。
報告書のなかで興味深いのは、沖野外輝夫さんによる(財)資源科学研究所 (現在活躍中の陸水研究者にはこの研究所に所属されて いた方が多い)による現河口堰建設前の環境調査 (漁業資源と水棲生物環境が主体)の概要の紹介と問題点の指摘であった。 沖野さんは「計画を前提にしてその影響を予測・評価するべきだった」「調査の構成を自然系、社会系、それらの総合系と 広くするべきだった」と書いているが、 まさにその通りである。
今回の報告書は、その性格上からやむを得ないが、一般読者には少なからず難解な部分が多い。 これを下敷きにして、河口堰問題を統合した一般向けの図書の出版が待たれる。
なお、一般の書店では購入できないので、 協会への直接注文となる〔(財)日本自然保護協会電話:03-3265-0521〕。 (谷田一三)

「地球科学の巨人たち」 R. レイメント著、阿部勝巳訳、東海大学出版会、本体価格2,800円

著者はオーストラリア生まれ、大学卒業後スウェーデンに渡り、 ストックホルム、ウプサラで古生物の研究を行った地質学者、 ウプサラ大学の名誉教授でありスウェーデン王立科学アカデミーの 会員でもある。 このレイメント氏による近代地質学の創始者17名の評伝だが、科学的業績だけでなく、生活面や交友関係の紹介もあり、 一味以上違った科学者伝記になっている。地質学の門外漢の評者には、すべての人物に馴染みがあったわけではないが、 ツンベリ、ベルセーリウス、ライエルなどは、地質学以外でもよく出る名前である。
リンネを産んだウプサラは小さな大学と城の町であるが、リンネ以降は西洋自然科学の一大中心となっていた。 ウプサラ大学の教授の眼で見たヨーロッパ近代の学協会の実態、学者の生態は、生き生きと書かれていて興味深い。 日本に関係の深い学者としては、幕末にオランダ医官として来日し多くの動植物標本を持ち帰ったリンネの弟子のツンベリ以外に、 ナウマンの名前がある。ナウマンは 日本の化石象、フォッサマグナの研究・地質調査所の創設と活躍した。
若くして日本での学問と行政に多くの成果をあげたが、帰国してからは ほとんど評価されず、不遇の地質学者として終わったという。 訳者で一部の章の共著者である阿部さんは、著者とは親交の深い古生物学の研究者。 ほぼ全ページに付されたかなり詳細な注釈には、著者と訳者の個性も反映された光るものが多い。(谷田一三)

「最新魚道の設計」 (財)ダム水源地環境整備センター編、信山杜、1998年、定価9,500円(税込)

本書は、魚道の水理や構造などの記述が中心であった 旧版「魚道の設計」の内容を更に充実させるとともに、 魚類生態に関する知見を大幅に加え、魚道と水産施設に関する設計ガイドとして 利用できるように編集したものである。
その特筆すべき内容は、河川やダムにおける工作物の 建設や計画・管理に従事されている技術者等が、 魚道の計画立案・設計と魚類資源の保護にあたってどのように対処すればよいか悩んでおられる現状に対し、 これまでのハードな設計論と 生物学的なソフトな対応を融合させ、総括的にとりまとめている点である。 さらに、海外における新しい研究成果や知見も豊富に紹介しているほか、ダム水源地環境整備センターが海外において 調査収集した最新の魚道情報も掲載されている。
本書の構成は以下のとおりである。

  1. 概論
    • 1.1 概説
    • 1.2 魚類生息環境と魚道
    • 1.3 魚道の定義と種類
    • 1.4 魚道と関連施設の歴史と現状
    • 1.5 日本と欧米の魚道技術の相違について
  2. 設計各論
    • 2.1 魚道の計画
    • 2.2 設計手順と設計指針
    • 2.3 関係魚類の生理生態
    • 2.4 位置の選定
    • 2.5 魚道の水理
    • 2.6 基本構造の設計と実例
  3. 魚類関連施設
    • 3.1降下魚対策と迷入防止対策
    • 3.2水産資源の保護と培養に関する施設
    • 3.3魚道の管理・観察施設

本書については、(財)ダム水源地環境整備センターにおいて、現在申し込みを受け付けているほか、 7月中には全国の店頭にて販売される予定である。(下村周)

担当: (財)ダム水源地環境整備センター 企画部佐藤、佐々木、光永
TEL:03(3263)9923 FAX:03(3263)9922



(2) 学会・シンポジウム等

INTERNATIONAL CONFERENCE ON ECOLOGICAL ENGINEERING

川那部会長宛に上記「国際応用生態学会議」の案内が来ています。 1998年11月23日〜27日にインド・カルカッタ(サイエンスシティ)にて開催予定。最終登録は7月31日ですが、 それ以後の受付もあるようです。 興味のある方は、至急事務局にご連絡下さい。(熊野可文)


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