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応用生態工学会ニュースレター No.3

Ecological and Civil Engineering Society(ECES)


1998年5月20日 (水) 発行
〔発行所〕応用生態工学研究会事務局 :
〒102-0083 東京都千代田区麹町4-5 第七麹町ビル 226号室
TEL. 03-5216-8401 FAX. 03-5216-8520
〔発行者〕応用生態工学研究会 (編集責任者: 幹事長 :谷田一三, 事務局代表 熊野可文)

3. いろいろなニュース


(1) 新著紹介


  • 「貝のミラクル―軟体動物の最新学」 奥谷喬司編著、東海大学出版会、本体2, 500円:
    日本の軟体動物学、マラコロジーの現在の先端を一気に読める。 18人の著者の競作は材料が多岐にわたるだけでなく、内容も極めて変化に富んでいる。 読後感は、いわば寄せ鍋の旨さのようなおもしろさであった。水中を泳ぐ映像で有名になったクリオネ (ハダカカメガイ) 、 養殖カキで問題になった貝毒、話題となっている環境ホルモンで注目を浴びたイポニシなど、貝がコレクターの対象や生態学などの学問以上に、 人とのつながりの大きいことを再確認した。カサガイの時差出勤、巻き貝の右券きと左巻きの問題、深海の熱水噴出口のシロウリガイなど、 興味のつきない話題も多い。淡水貝類の話題がないのが個人的にはさびしいが、最新の日本の貝類学の好著。編集作業に時間がなかったのか、 校正ミスが少々目につくのが惜しまれる。 (谷田一三)
  • 「和州吉野郡翠山記―その踏査路と生物相」 御勢久右衛門編著、東海大学出版会、本体10, 000円:
    畔田翠山 (くろだ・すいざん) は、幕末の紀州藩士、本草局の医員で採薬に従事した。 この翠山記は、当時の大和国吉野郡の山岳、文化、生物の踏査記録である。江戸期の本草学の書としては、 小野蘭山の「本草網目啓蒙」などが著名であるが、翠山の記述は地域博物学として優れているだけではなく、 現地・現物を自ら調査し、先人の書を的確に引用・批判し、新知見を示している部分など、 まるでよくできた科学論文を読むかの章も多い。 サンショウウオについては、「啓蒙」の3種の混同を明解に指摘し、のちに新種として記載されることとなる、 オオダイガハラサンショウウオも現地名「ヤマイオ」として正確に記録している。 紀伊半島の固有亜種のキリクチイワナ、現在は見られなくなったクロユリなど、生物学にとっても 興味深い記述が続く。解題や解説も読み飽きない。編著者の御勢さんは、紀ノ川沿いの奈良県五條市に在住で、 当時の奈良女子大学教授津田松苗さんの指導を受けて、水生昆虫の群集生態学で理学博士 (京都大学) を取得された。 また、登山家としては今西錦司さんに師事し、博物学については上野益三さんの薫陶を受けた。 翠山記の解説と解釈には御勢さんの博物学・生態学の知識が全面的に生かされているだけでなく、 翠山の踏査路をたどった氏の登山家としての眼も生きている。 (谷田一三)
  • 「共生の生態学」栗原康著、岩波書店 (新書新赤版546) 、本体640円:
    著者の粟原さんは、1926年生まれ、戦後生態学の第1世代を代表する学者で、岩波新書にあった「有限の生態学」は、 評者も学生時代に読んで感銘を受けた。小さな生態系 (モデル、自然界とも) の動態とメカニズムを一貫して追及してこられたが、 IBP (国際生物学事業) などで、蒲生干潟の生態系などについても大きな成果をあけられた。 本書は、著者の過去の研究成果の集積とともに、エコテクノロジーを核として、著者なりの将来への展望も示されている。 当世はやりの「共生」が表題にあげられているが、内容はガイヤ仮説まで含んだ、生態学の多くの分野を網羅している。 その半面、もっと書き込んで欲しいと思うテーマも見られた。 著者の専門の反芻動物の第1胃 (ルーメン) については、微生物群集とホストとの共生関係も含め、最近の研究成果も盛られ興味深い。 未消化固形物が基質となることで高い微生物密度が維持される点は、野外での生態システムに共通する話かもしれない。 フロー型とサイクル型の生態システム、工学がブラックボックスにしてきた生態コンポーネントなどの議論も、 考えさせられる部分が多い。大著「動物の生態学」を著された森圭一さん、群集論の大きな論文「種多様性指数値に対するサンプルの 大きさの影響」(日本生態学会誌, 46巻3号) を遺稿とされた森下正明さん、そしてこの栗原さんと、老師のパワーに脱帽する最近である。 (谷田一三)
  • 「保全生物学のすすめ」プリマック, b著、小堀洋美訳、文一総合出版、本体3, 800円:
    昨年の秋に出版された本書は、アメリカ合衆国で広く読者を獲得したプリマック著の一般向けの教科書、 " Essentials of Conservation Biology" の翻訳書という一面をもつが、日本の読者の関心にも十分に応えるため、 新たにいくつかのコラムが加えられるなどの工夫もなされており、グローバルな視点から日本に特有の問題まで、 幅広く学ぶことのできる教科書となっている。保全生物学の発祥の地ともいえる北アメリカでの「使命の科学」としての 保全生物学の特徴を余すところなく表した好著であり、その「使命の科学」を担う科学者、さらには保全活動家としての著者の 自覚と気迫がよく伝わってくる本である。本書を読めば、保全生物学が実際に保全を進めるために、社会の多様な領域の専門家との 協同をめざしていることがよくわかるであろう。
    第1章保全生物学と生物多様性、第2章生物多様性の危機、第3章個体群と種のレベルでの保全、 第4章生物群集レベルでの保全、第5章保全と持続可能な発展(鷲谷いづみ)
  • 「サクラソウの目―保全生態学とは何か」鷲谷いづみ著、地人書館、1998年3月、本体2, 000円:
    欧米では保全生態学に関する本が次々と出版され、今では数十冊にのぼる。遅れをとった日本では1996年に出た鷲谷・矢原共著 『保全生態学入門―遺伝子から景観まで』 (文一総合出版) が最初の教科書であった。その後、2, 3の類書が出版されているが、 生態学や遺伝学に関するある程度の予備知識がなければ読みこなせない部分もあり、異分野の人問にはむずかしいという声があった。 そこで『保全生態学入門」の入門書をつくろうというねらいで執筆されたのが、本書であるという。 筆者が永年研究に取り組んできたサクラソウという植物を材料に、発芽から開花・結実にいたるまでの研究成果を紹介しながら、 サクラソウの適応とその生活を支える条件を明らかにしている。特に訪花昆虫とのパートナーシップに代表される種間相互の ネットワークの大切さが強調される。しかし、今やサクラソウも絶滅を危惧されるほど産地が減少し、 残された自生地の将来にも憂慮すべき難題が待ち受けている。開発による自生地の消滅だけでなく、 周辺環境の変化が種間ネットワークの分断を通じて種の存続基盤を脅かすという事態が明らかになってきたのである。
    最後の2章はサクラソウを離れて保全生態学の役割と重要性を訴えている。 広範な地球環境問題の行き着くところのひとつが生物多様性の危機であり、「生物多様性の急速な衰退は、 地球環境全体がとても危ないものになっていることを示している。逆に、私たちが的確な現状分析と適切な対策によって地球環境問題に対処し、 生物多様性の現状を維持することができたとしたら、地球にはそれほど大きな破綻が起こらないですむかもしれない。」 というのが著者の主張である。
    今、生態学者だけではなく、開発事業の現場にたずさわる技術者やコンサル関係者にも保全生態学への関心が高まっている。 絶滅危惧種を中心にどのようにすれば生き物たちの生育環境を守ることができるか、ということが重要な課題だからである。 しかし、保全生態学は、絶滅危惧種を守るための単なるノウハウの学問ではない。生物多様性、すなわち「遺伝子から景観」 までの多様性を守ることを明確な目標に掲げて研究が展開されるもので、その内容は生態学、分類学、遺伝学などの基礎的研究と深く結びついている。 さらに、自然とヒトとの関わりに関する思想まで問い直そうとする広がりをもつ。 現場で生かされる保全の技術も、もちろん大切である。そのために生態学と土木工学の知恵を持ち寄って考えようというのが 本研究会の趣旨であるが、さらに、保全の努力が何故大切なのかという点で共通の認識を持つことは、もっと根本的な課題である。 そこまで問題意識を共有できてこそ、本会の活動が稔りあるものになるのであろう。 本書は、特別の予備知識がなくても読み進められるよう平易に書かれていながら、読み終わったときには、保全生態学の目指すものが何なのか、 しっかりと理解できる。何よりも保全生態学にかける著者の情熱と使命感が、読者を突き動かすことであろう。 (角野康郎)
  • 「中小河川における多自然型川づくり〜河道計画の基礎技術〜」 中小河川における多自然型川づくり研究会編著、 (財)リバーフロント整備センター、1998年、税込500円:
    本書は、現場技術者が中小河川における多自然型川づくりの河道計画を行う際に参考となる基礎技術をとりまとめたものです。 以下の内容から構成されています。
    • 1. 川づくりの基本的な考え方
    • 2. 河道計画の考え方
      • 2. 1 どういう川の姿を参考とするか?
      • 2. 2 どういう場で川づくりを行うか?
      • 2. 3 水域において最低限留意すべき事項
      • 2. 4 水際域において最低限留意すべき事項
      • 2. 5 陸域において最低限留意すべき事項
    • 3. パターン別の河道横断形状の検討例
    本書は、書店で取り扱っておりません。ご購入希望の方は、御氏名、会社名、御住所、 電話番号、冊数を明記の上、 faxで下記の担当までお申し込みください。 (池内幸司) 担当: (財) リバーフロント整備センター研究第二部 和田、浅利、北田 tel:03 (3265) 7121 fax: 03 (3265) 7456

(2) 学会・シンポジウム

 
  • 「山から海にいたる河川水系の総合管理の技術」
    • 1. 日時: 平成10年6月2日 (火) 13:00〜16:45
    • 2. 会場: 名古屋市工業研究会
    • 3. プログラム:
      • 「21世紀の川とそれを支える河川技術」
        建設省中部地方建設局河川部長 門松武
      • 「環境影響評価法と河川環境にかかわる技術指針」
        建設省河川局河川環境課建設専門官 足立敏之
      • 「水系一環土砂管理の必要性と技術」
        建設省土木研究所河川部長 宇多高明
      • 「河川の生息環境の河川水理学的評価」
        名古屋大学大学院工学研究科助教授 辻本哲郎
    • 4. 主催: 土木学会中部支部
      共催: 土木学会水理委員会河川部会
    • 5. 申込・問い合わせ: 土木学会中部支部
      tel. 052-222-3705 fax 052-222-3773
  • 「第34回水工学に関する夏期研修会」
    • 1. 期日: 1998年7月28日〜30日
    • 2. 場所: 名古屋大学工学部 (名古屋市千種区不老町)
    • 内容:
      • aコース (水文・河川)
        総合テーマ: 新しいパラダイムの水工学
      • bコース (海岸・港湾)
        総合テーマ: 沿岸域における環境評価技術としてのモデリング
    • 3. 主催: 土木学会 (水理委員会、海岸工学委員会)
      共催:土木学会中部支部
    • 4. 申込問合先: 土木学会経理課 TEL. 03-3355-3436
      (申込締切日:平成10年7月15日)
  • 「河川の自然復元に関する国際シンポジウム」の案内
    このたび、河川における多様な自然環境の保全・復元をテーマに、欧米より4名の専門家と 国内より河川工学、生態学、自然保全等の専門家を多数お招きし、下記の要領で 「河川の自然復元に関する国際シンポジウム」を開催致します。多数参加くださいますようご案内申し上げます。
    • 1. 主催 河川の自然復元に関する国際シンポジウム実行委員会
    • 2. 後援 応用生態工学研究会、建設省、環境庁、他12団体
    • 3. 開催概要
      • 日時: 平成10年5月26日 (火) 〜27日 (水)
      • 会場: ニッショーホール (東京都港区虎ノ門2丁目9番16号) tel: 03-3503-1486
    • 3. シンポジウムの趣旨
      長年にわたって、河川整備は人間社会の経済的な利益に重点を置いて、計画され実施されてきました。 しかしながら、近年、持続可能な展開に貢献できるような河川事業が求められており、 生態学の視点からのアプローチが必要となっております。
      本シンポジウムは、河川生態系の動的な特性を明らかにし、それに基づく自然回復の理念を導き、 今後の河川整備に対する新たな科学的・技術的な基盤を構築することを目的としております。
      このシンポジウムのもう一つの重要な目的は、基礎科学者・工学系の研究者・現場の技術者・ 行政官に学際的な意見交換の場を提供することにあります。 このため、欧米からの4名の専門家を始め、河川工学、生態学、自然保全の専門家を国内外から 多数招いております、この機会を通じて、河川生態系の特性に対する理解を深め、 欧米および日本の自然復元の現状を知り、その知見を各々の分野で役立てていただくことにより、 わが国の河川の自然復元がより一層進むことを希望しております。
    • 4. プログラム
      • 5月26日 (火) 10:00〜18:00
        • 午前「河川域における生態系の動態の物理的特性」
          • 基調講演者: 玉井信行 (東京大学教授)
          • 講演者:
            • 山本晃一 (建設省土木研究所研究調整官)
            • 篠沢健太 (大阪芸術大学講師)
        • 午後「河川域における生態系の植生の特性」
          • 基調講演者: Norbert Mueller (ベルリン工科大学助教授)
          • 講演者:
            • 奥田重俊 (横浜国立大学教授)
            • 鷲谷いづみ (筑波大学助教授)
        • 「河川域における生態系の動物群集の特性」
          • 基調講演者: Harald Plachtor (フィリップス大学教授)
          • 講演者:
            • 山岸哲 (京都大学教授)
            • 谷田一三 (大阪府立大学教授)
        • 懇親会18:30〜20:30
      • 5月27日 (水) 10:00〜17:35
        • 午前「河川における自然復元の原則その1」
          • 基調講演者: F. Douglas Shields, Jr. (米国農務省農業研究所)
          • 講演者:
            • 桜井善雄 (応用生態学研究所長)
            • 東信行 (弘前大学助教授)
        • 午後「河川における自然復元の原則その2」
          • 講演者:
            • 辻本哲郎 (名古屋大学助教授)
            • 河原能久 (東京大学助教授)
        • 「河川の自然復元の事例研究」
          • 基調講演者: Jean-Paul Bravard (パリ大学教授)
          • 講演者:
            • 島谷幸宏 (建設省土木研究所河川環境研究室長)
            • 鈴木輿道 (建設省東北地建河川情報管理官)
            • 宮田昌和 (豊田市土木部河川課主査)
            • 村山志郎 (豊田市矢作川研究所渉外担当幹事)
    • 4. 参加費
      • シンポジウム (論文集代込) 一般15, 000円、学生5, 000円
      • 懇親会5, 000円
    • 5. 申込・問合先
      • 河川の自然復元に関する国際シンポジウム事務所
      • (財) リバーフロント整備センター
      • 担当: 浅利、北田、池内、和田、小林
      • 〒102-0075東京都千代田区三番町3番地8 (泉館三番町3階)
      • e-mail:
      • url: http://wwwlg.meshnet.or.jp/rfc/ もご参照ください。


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