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応用生態工学会ニュースレター No.3

Ecological and Civil Engineering Society(ECES)


1998年5月20日 (水) 発行
〔発行所〕応用生態工学研究会事務局 :
〒102-0083 東京都千代田区麹町4-5 第七麹町ビル 226号室
TEL. 03-5216-8401 FAX. 03-5216-8520
〔発行者〕応用生態工学研究会 (編集責任者: 幹事長 :谷田一三, 事務局代表 熊野可文)

1. 会誌

(1) 会誌の編集方針と投稿の呼びかけ

編集委員長 竹門康弘 (大阪府立大学総合科学部・自然環境科学科)

懸案となっておりました応用生態工学研究会誌の方針・会誌刊行規程・会誌投稿規程 ならびに校閲規程が漸く決定いたしました.ここに, 全文を掲載して周知を期すとともに会員の皆様は もとより会員外の皆様へも広く投稿をお願いいたします. 編集委員会や理事会では,各規程への合意が 得られるまでに様々な反対意見や修正案が提出され論議されました.比較的短時間でここまで漕ぎつけ られたのは, e-mailによって活発に意見交換が行われた結果です. 会誌の編集方針や本研究会の方向に関わる重要な議論もありましたので, 以下にそれらの概略を紹介しつつ併せて私見を述べさせていただきます.


1) 掲載報文の種類 (刊行規程)

本誌報文として, 原著論文, 総説, 短報, 意見, 書評, 特集ならびに研究会記事 などを掲載することになりましたが,当初は「データ」という新ジャンルをつくる案 もありました.これは, 単独では分析や考察をする対象にならないが蓄積することに よって意味の出るデータを, データだけ受け付けるという主旨でした. ただし, この案は, 各地の水文気象データや流量観測データなど膨大な量があり, これらをすべて受け付け始めたらきりがないということで削除されました. それでも, こうしたデータを短報として掲載する可能性はまだ残されています.


2) 掲載報文の定義 (刊行規程)

本誌刊行規程では, 原著論文, 総説, 短報, 意見について敢えて定義を行いました. これは編集委員会の席上で, 分野間による定義の差異が認められたためです. 本研究会には今後もさらに異分野の会員が増えることを期待しますので, 言葉として定義しておくことが必要と考えました. これらの定義のうち, 「短報とは, 速報性を重視した事実報告や, 原著論文にするには情報不足であっても 公表の価値がある事例報告などをいう. 」に記された「公表の価値」については, 主観が排しえないとの異論が唱えられました. しかし, 校閲とは, 結局のところ価値判断をする作業に他なりません. 校閲規程には, その価値判断をできるだけ公正に行うためにこそ細部を定めていると考えられます. 特にこの研究会においては、「科学的な仕事を通じても, われわれは価値の判断をしている ことを強く意識する必要がある」との信念から敢えてこの表現を残しました. 当初案では、原著論文にも「公表の価値がある事実の発見や解釈」との表現が使用されて いましたが,これは「新しい事実の発見や解釈」に修正されました.


3) 投稿資格 (投稿規程/会誌の方針)

投稿資格については, 当初「本会誌への投稿は, 会員外からも広く受け付ける. 投稿される報文は, 未発表のものに限る.ただし, 編集委員会がとくに必要と認めた場合は この限りではない. 」とする案も出されました. 理由は, 「会員外からの意見を募りやすい.雑誌のレベルの向上のため. 投稿資格を会員に限らなくても, 会員数の確保は十分可能. 発足にあたって 発起人を辞退された人々などからの懸念も含めて,会員外からの意見を掲載できる 体制にした方がよい」などでした. しかし, 「少なくとも原著については、会員相互のレベルアップの観点及び会員に特典 (会員になれば原著の審査をしてもらえる) を与えたいとの考えから会員に限定すべき」 との意見が優勢を占めました. とくに発足時の会員については, できるだけ特典が必要であるとの観点から, 少なくとも第1著者は会員に限定することとなりました. また, 限定を第1著者としたのは,論文審査の特典を重視したからです.
ただし, 会誌の方針の中の「投稿資格」の項では, 「当面は原著論文の第一著者については, 会員に限るものとするが, 本研究会の社会的認知の度合が増し, 会員となることのメリットが 増した折には,会誌の完全オープン化を実施する. 」と明言しました.


4) 会誌の英名 (会誌の方針)

当初の編集委員会案は, 会誌英名:Ecological Engineering (Ecol. Eng. )で, 応用生態工学研究会の英名:Ecological Engineering Society of Japan (Ecol. Eng. Soc. Jpn) でした. これに対して, 会長などより強い反対意見が出された結果, 幹事会・理事会における議論を経て 現状の会誌英名:Ecology and Civil Engineering (Ecol. Civil Eng. ) , 応用生態工学研究会の英名: Ecology and Civil Engineering Society(Ecol. Civil Eng. Soc. ) が採用されました.
この名称の主旨は,生態学分野と土木工学分野の対等な関係の確立にあります.


5) 用語 (投稿規程)

和文の報文についても, Abstract・図・表の説明については英語を用いることになりました. この点については、「英語に馴染まない実務者にも読んでもらうために日本語の図表も認めるべきである」 との意見も出ました. しかし, 1) 本誌のレベルを国際的にも通用するようにするためには, 図表の英語表記が必須であること. 2) 内容が実務者にも啓蒙価値のあるものであれば、本誌を引用する形ですぐに和訳されるにちがいない ことなどから, 英語表記を基本とする案が了承されました. ただし, 専門用語や動植物名などについて和文との対応が分かりにくいとの意見に対応して、 「和文報文において,図や表中に専門用語/動植物名/岩石・鉱物名が英語で記される場合には, 本文中に日本語や和名との対応を明記すること. ただし, 図表中の英語を本文中で対応和訳することが困難である場合には, 図表中に和文用語を並記することもできる. 」との規程を盛り込みました.


6) 文献の表記方法 (投稿規程)

土木学会論文集などの文献表記 (番号式) を採用できないかとの意見もありました. 文献の表記方法には, 分野による習慣の差異がみられます.そして. 各自が慣れ親しんだ方式に こだわりがあることは, 十分に理解できます. ただし, 以下2つの理由から原案通りの文献表記方式を採用しました. 1) 引用時に文中に出典文献の著者名が表記されないことは,事実や意見を述べた個人の無名性につながります. たとえば, 資料としてそこだけコピーされた場合などにこのことが問題となります. 日本では, 政府刊行物や行政資料の多くから, 文章について個人が責任をもつとの意識が極めて希薄であるとの 印象を受けます.そうした習慣を是正していくためにも, 引用した人の名が逐一登場する方が良いと思います. 2) 原稿を編集する身になると, 修正時の手間は番号制の方が圧倒的に多くなるので, 是非とも避けたいところです. 番号付けを自動的にできるソフトがありますが, 修正作業や修正した結果があっているかどうかをチェックする作業は相変わらず大変です.



7) 研究発表会講演集との関係

研究発表会の講演を全て会誌に掲載する方式をとらない方針を決定しました、 つまり, 研究発表会では, あくまで講演要旨集を配布することとして, 講演内容を会誌に投稿するか否かは 本人の意思で決めてもらうことになります. たとえば今年の研究発表会で講演される論文のうち, 発表段階で投稿論文として遜色ないレベルに達していれば, 第2号に掲載可能ということになります. しかし, 審査結果によっては, それ以降の号に掲載される可能性や掲載不可の可能性もあります.


以上の他にも採用されたものされなかったものを含めて様々な意見や修正案が出されましたが, この辺で割愛させていただきます.
5) の図表の英語表記に関しては, 「本誌の読者層として実務担当者が多いことを考えると想定するレベルが高すぎないか」との懸念も表明されました. これは, 本研究会の存在意義にも関連する重要な問題なので,これを切り口として私見を述べさせていただきます. まず研究成果やそれに基いた意見を「実務担当者に伝えるための努力」は大いにするべきであると思います. しかし, なぜ「応用生態工学研究会」が設立されたかを考えると,たとえば日本の川をどうすればよいかについて 「研究成果を伝える努力」が必要なのではなく, 「研究成果を挙げること」が必要なのは明らかです. しかも、学術的に高いレベルの研究を進めなければなりません. その役割を, 生態学も土木工学も今のままでは果たせそうにないという現実が「応用生態工学研究会」への期待 に結び付いているのだと理解します. そして, もし学術的に高いレベルであることと実用性のあることとが相反するのが実情であるとすれば, むしろ実情の方を変えていかなくてはならないと考えます. 言うまでもなく, 英語であれ, 日本語であれ, 用語は学術的に極めて重要です. 用語の概念を使い分けることができなければ,真の理解はありえないはずです.

では, なぜ英語にする必要があるのか. 簡単に言えば,日本の学問レベルが自然科学分野で欧文圏より遅れているからでしょう. 個人的には世界レベルの研究者が多数いますが, 概念や用語については今でも輸入過多です. 新たな概念によって世界の研究を方向付ける役割は担っていません. ただし、その理由の一つとして,アピール不足もあると思われます. したがって, 日本の研究を世界共通の用語で語ることは, 1) 学術的に高いレベルを達成するうえで,また2) 多くの人々に認知してもらううえで必要であると考えられます.

なぜ, そうまでして学術的に高いレベルを達成する必要があるのか. それは, 自然の仕組みを理解し利用することが真剣に求められているからです. 自然の摂理に根差した環境管理を実現するためには, あらゆる事業について目的と成果とを科学的に照合していく必要があります. その過程を,共通の用語によって, 客観的に記述する場を提供することが本研究会誌の役割であろうと考えます.

なぜ, 生態学や土木工学がその役割を果たせないのか. 生態学はあくまで生物を主体とした環境を研究対象とし, 土木工学は与えられた目的にあった物造りを中心課題にしてきたため, いずれの分野でも「人が自然環境をどう利用するべきか」について研究目的にしていないからであると思います. 応用生態工学には, この「どう利用するべきか」という価値の問題が常につきまといます. しかし, 本研究会のスタンスは, ある価値観に組みするのではなく, この価値観に従えばこうなる (なった) という予測や事実を究明し, 新たな価値判断を促すところにあると考えます.これらを理想論で終わらせないためにも, 本研究会が現実に機能していくことを祈ります. その手始めとして. 今年スタートする応用生態工学研究会誌創刊号ならびに後続号への意欲的な報文投稿を切にお願いいたします. 創刊号への投稿締切は7月18日 (土) (当日消印有効) , 第2号への締切は11月末日となりますので, お早めにご準備のほどお願いいたします.


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